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2018年11月20日

【極み職人 vol.13】自らも癌と戦いながら、明るく警鐘を鳴らす達人

原武(さくらもち制作部)

原武(さくらもち制作部)

 

毎月芸術的な職人技とその人柄に迫るこのコーナー『極み職人』。

私たちの身近には、職人ならではのこだわり、極めた技、その背景にある魅力的な人柄をお持ちの方が多くいらっしゃいます。

そんな方々をご紹介し、職人としての想いに触れることで、新たな発見、刺激や気づきになるコーナーになれたら嬉しいです。

 

今回ご紹介させていただく職人さんはこの方!

 

 

アービンジャー・インスティチュート・ジャパン   公認ファシリテーター
加藤 典子(かとう のりこ)さん

 

ええっ、この人が?

 

その事を知らない人が今回の「極み職人」加藤さんに会ったときに、誰が癌闘病中の人だと思うだろう。それほど快活な女性だ。

もちろん、取材を申し込むのにためらいもあった。病気療養中の人を無理に連れまわすことになるんじゃないか、ご本人が大丈夫でも、まわりからご批判をいただくことになるんじゃないか。

しかし、誰にでも訪れる可能性のある状況。いざその時が来た時のために、いや来ないようにするためにも、話をお伝えしたいと思う。そして、それが間違いではなかったと思っていただければ幸いだ。

取材の日は、あいにくの雨。でも、待ち合わせ場所に現れた加藤さんは、そんな雨雲を吹き飛ばすような元気な笑顔で私達を迎えてくれた。

加藤さんは、現在も治療中でありながら、体調の許す限り、患者会などで出会った同病のご友人たちと行楽地などに出かけている。その行き先は、高尾山、湘南、鎌倉など。二年前には富士山にも登ったのだとか。今回はその中でも、幾度となく訪れているという熱海の来宮神社に同行した。もともと身体を動かすことは好きだった加藤さんだが、特に山登りをする楽しみをこう語ってくれた。「山頂に辿り着いたときの達成感を求めて辛い山道を登っていくのが、治療に似ているんです」と。「それに、山にはだいたい温泉やグルメがあるんですよ」と笑った。

 

 

病気よりも悩みは・・・

加藤さんが病気になって感じたのは、病気そのものに対してもそうだが、人間関係で悩んでいる人が多いということ。「私の辛さを誰もわかってくれない」「家族に迷惑をかけるんじゃないか」

証券会社に勤めたあと、コーチング(※コーチング:相手の潜在能力を開花させ最大限に力を発揮させる能力開発法)の仕事をしていた加藤さん。その頃に出会った一冊の本が、ネガティブに捉えがちな状況も前向きに捉える一助になったと言う。簡単にいうと「相手を自分と同じ『人』として見る」という内容なのだが、それが現在のセミナー講師の仕事につながっていく。
 そんな加藤さんだからこそ、「先生、看護師さん、友達、仲間に恵まれた」状況を作るのだろう。

 

 

備えをしていてほしい

加藤さんに病が見つかったのは二〇一三年末のこと。卵巣癌だった。祖母も母も同じ病気だったため、定期的に検診を受けてはいたのだが。そして、十時間ほどの手術で、卵巣の他にも癌が浸潤していた臓器を切除した。
 最初の発覚からもうすぐ五年になるが、再発しているのでまだまだ治療中。卵巣癌患者を中心とした患者会に出かける中で、闘病記ブログを始めたことが、加藤さんにとって新たな出会いのきっかけとなる。一緒にハイキングに行く仲間もここから生まれた。
 加藤さんと同じ病気の人がブログを見て、「何年も元気にいろんなところに出かけ、美味しそうなものを食べてるのを見て、すごく希望になる」などと言われることもあるのだそうだ。

ただ、加藤さんが心配しているのは、「癌になっても、こんなに元気でいられる」とか、「医療の進歩によって治るんだ」と曲解して検診を受けなくなったり、不摂生な生活をするような人が増えてしまうことだ。
 「希望は持って欲しい。医療の発展により不治の病ではなくなった。けど、リスクを最小限にすることや、備えることはご自身でやってもらいたい。日頃からの検診とか、健康に気をつけるとか、心身ともに健やかに過ごすことがすごく大事だ」と。
 健康が当たり前ではないということを改めて心したい。気をつけていても病気にはなるが、備えはできる。例えば、保険に入ること、検診を受けること、家族や友達との人間関係を作っておくこと。そのことを加藤さんは伝えたいのだ。

 

 

貴重な経験

 

最後に加藤さんはこう付け加えた。「同病の仲間の存在は今の私には欠かせないものですが、一方で悲しいお別れも多いのも現実です。この四年間で三七人の仲間とのお別れがありました。そういうお別れが辛いから同病のお友達は作りたくないという考えも私はあっていいと思います。
 何もできない虚しさに何度涙したかわかりません。でもその辛さや寂しさ以上に、彼女たちの生き樣、ご家族や大切な人たちへの愛を垣間見させていただいたこと。それは私にとって、本当に貴重な経験であり宝物だと思っています」

 現状から決して逃げず、でも悲観せず、自分らしく人生を楽しむこと。決して病気にならなければわからないことではないはずなのに、生き方の達人に改めて気付かされたひと時だった。

 

 

<撮影ご協力>

伊豆國霊社 熱海 來宮神社

〒413-0034
静岡県熱海市西山町43番1号 

TEL:0557-82-2241

homepage:www.kinomiya.or.jp

 

<加藤典子さんが出会った本>

文中の加藤さんが出会った一冊の本
『自分の小さな箱から脱出する方法』大和書房
〈著〉アービンジャー・インスティチュート,金森 重樹,冨永 星

原武(さくらもち制作部)

この記事を書いた人

原武(さくらもち制作部)

さくらの森の会報誌「さくらもち」の企画編集、執筆、写真を担当。

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